【多角経営とは?】多角経営の4つの種類とメリット・デメリット、多角化の進め方を徹底解説
企業として大きく成長するための戦略の1つに「多角経営」があります。業種問わず、大手から中小企業まで多くの会社が導入している多角経営ですが、「言葉は知っているものの具体的にどういった戦略なのか分からない…」と悩んでいる方も少なくありません。
そこで本記事では、多角経営の基本的な情報をはじめ、多角経営の4つの種類やメリット・デメリット、成功するためのポイントについて詳しく紹介します。多角経営の進め方もまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を読んだ人にオススメ
新規事業選びの成功法則!押さえるべき3つの重要ポイント
<目次>
多角経営とは?多種多様な業種に事業を拡大すること
多角経営は、事業を拡大させるための成長戦略の1つです。これまで軸としていた事業とは異なる市場で新しい商品・サービスの提供をすることにより、低迷している状況からの脱却や企業としての成長を促せます。
軸としている既存事業と関連性が高い分野はもちろん、全く関係のないジャンルへの進出など、企業により多角経営の方向性はさまざまです。
大きな成功を収めていても、1つの事業のみで長く経営を持続させていくことは難しいです。多角経営をすることにより新しい方向性を見つけ出すことができ、ビジネスを広げる大きなチャンスを掴めます。
多角経営が増加している理由
ここ数年、多くの企業が多角経営の導入をはじめています。その大きな理由として挙げられるのが、社会情勢の急激な変化です。
近年で最も印象深いのが「新型コロナウイルスの世界的パンデミック」ではないでしょうか。人々の生活様式がガラリと変わり、倒産や破産などに追い込まれてしまった企業も少なくありません。
また、グローバル化の影響で市場競争が激化している昨今では、消費者のニーズも大きく変化しています。
軸としている事業が1つの場合、社会情勢の変化に対応が追いつかなかったり、消費者のニーズを満たせなかったりといった事態になりかねません。多角経営を導入し、さまざまな状況に柔軟に対応できるようにすることが、今企業に求められている重要なポイントです。
多角経営の4つの型
多角経営には4つの型があり、それぞれ異なる特徴があります。
【多角経営の4つの型】
|
多角経営をスムーズに進めていくためにも、まずは4つの型について正しく理解しておきましょう。
①垂直型
既存の市場において保有している資源やノウハウを活かすことで、新サービスのシェアを拡大させていくのが「垂直型」です。主力としている事業の上流、もしくは下流工程に事業を拡大することを目指し、これまで関わりのあった取引先や業界内の繋がりを基にして事業展開を進めていきます。
レストランを経営している企業が、提供する食材を生産するために農業に参入し、野菜などの調達を行うのは、上流から下流の垂直型多角経営の例です。
②水平型
既存市場である程度のノウハウを活用でき、軸となる事業が含まれた分野での事業展開が「水平型」です。例えば、自動車メーカーがバイク開発を行ったり、レストランチェーン店がテイクアウト専門店をオープンすることがあります。
同分野での展開となるため、マーケティングに必要なコストを最小限に抑えられる上に、既存事業との相乗効果が期待できるのがメリットです。
また、先にお伝えした垂直型よりも自社のノウハウを直接的に活用できるため、スムーズな事業展開が可能となります。
③集中型
これまで培ったノウハウや知識を活用し、新しい分野でのサービス展開を行うのが「集中型」です。水平型では、既存事業と関連性が高い分野での事業展開でしたが、集中型はこれまでの事業とは異なる新しいジャンルでの展開を行います。
写真フィルム会社が既存事業の技術力を活かして化粧品の開発に着手したり、カメラを製造・販売している企業が医療機器の開発をスタートさせるなどが主な例です。
新しい市場での商品・サービスの提供となるため、営業力が欠かせません。マーケティングコストなども大きくかかってきますが、事業を拡大し顧客ニーズに柔軟に対応できるようになるので、企業としての大きな成長に繋がります。
④コングロマリット型
主力となる事業とは全く関連のない事業へ進出することを「コングロマリット型」といいます。新しい市場に参入し、これまでとは違うノウハウや資源を活かしてサービスを提供することで、シェアの拡大を狙う経営戦略です。
コングロマリット型は、簡単にいえばグループ企業を指します。「本来であればいくつかの企業で行うべき事業を1つの企業で担ってしまおう」という考えからこの名がつけられました。
例として挙げられるのは、コンビニエンスストアによる銀行事業への参入や、電機メーカーによる損保サービスの展開などです。
多角経営の4つの型の中で最も失敗リスクが高い種類ですが、成功すればこれまでの限られた消費者のみではなく、幅広い顧客ニーズへの対応が可能となります。
多角経営を行うメリット
多角経営を導入することで得られるメリットはとても多く、その中でも特に以下の4つのポイントは非常に大切です。
【多角経営を行うメリット】
|
具体的な内容を正しく理解し、多角経営におけるメリットを最大限活かせるような戦略を練っていきましょう。
経営基盤が安定することによりリスクを分散できる
既存事業が1つだけの場合、企業環境・顧客ニーズ・市場動向などの変化によって経営に大きな打撃を受けてしまうケースは少なくありません。仮に既存事業の業績が好調でも、それを長く持続させていけるかどうかは未知数です。
多角経営を導入するということは、複数の事業を展開することになり、変化によるリスクを分散させて経営基盤を安定させることに繋がります。
また、1つの事業が衰退してしまっても他事業で収益を確保できるため、急激な業績悪化を避けることも可能です。
相乗効果を得られる
多角経営では相乗効果も狙いやすく、単独事業のみでの活動以上の成果が得られます。連鎖的に作用するので企業としての長期的な成長に繋がり、利益の向上や業務の効率化など、多方面での効果が期待できるでしょう。
多角経営における相乗効果は4種類あります。
生産シナジー | 機械・原材料・生産技術などの共有で生じる効果 |
販売シナジー | 販売チャネルやノウハウなどの共有で生じる効果 |
投資シナジー | 設備の共同利用などにより生じる効果 |
経営管理シナジー | 経営・管理のノウハウ共有により生じる効果 |
経営資源を有効活用できる
保有している経営資源を有効活用できるのも多角経営の大きなメリットの1つです。活用できる資源は、機械設備などの製造・開発に関わる部分だけに限りません。経営・マネジメントといったノウハウも共有できる上に、スキーリゾートや海水浴場の施設など、活用可能な時間や季節に縛りがある土地・建物なども新しい事業展開によって有効活用が可能です。
経営資源が無駄になっている時間・コストを削減しつつ、新しいサービスにおけるシェアの拡大が狙えます。
社員のモチベーションを向上できる
展開されている事業が1つの場合、社員のキャリアやポストには限りがありますが、多角経営を導入することで事業を拡大すると必然的にポストが増えるので、社員のキャリアの可能性が広がります。
さらに事業を拡大することで、「自分のスキルをもっと高めたい」「どこまでいけるかチャレンジしたい」という社員も現れ、意欲のある人材の発掘に繋がるケースもあるでしょう。
社員のモチベーションを高めることは、会社としての成長はもちろん、企業利益の向上や社内の活性化にも繋がる大きなメリットといえます。
多角経営を行うデメリット
多角経営にはデメリットもあるため、安易な思い付きで導入することは避けましょう。
ここでお伝えする3つのデメリットに対する理解を深め、トラブルの回避やリスクを最小限に抑えるための対策を講じるようにしてください。
【多角経営を行うデメリット】
|
多角化にコストがかかる
多角化は、要約すると新しい事業を展開するということです。新規事業を立ち上げるためには当然コストがかかります。保有している経営資源の活用ができる一方で、一切コストをかけずに多角化することはほぼ不可能なのが現状です。
特に、将来的なリスク分散を視野に入れた多角経営を行う場合、事業の規模をある程度まで大きくする必要があるため、短期的な投資をしなければいけません。
また、利益を獲得するまで時間がかかることも理解しておきましょう。収益が出るまで持ちこたえるための資金力が必要となるため、自社の状況をしっかりと把握した上で戦略を考えてください。
大きな損失を生む可能性もある
多角経営を導入しても必ず成功するとは限りません。新規事業をスタートさせるためにかかったコストを回収できずに継続できなくなってしまうこともあります。
また、新規事業の営業活動によって顧客へマイナスな印象を与えてしまった場合、軸としている既存事業のイメージも下がってしまうという悪循環に陥るケースも少なくありません。
既存事業とは違う利益が獲得できるといったメリットがある反面、結果的に大きな損失を生んでしまう可能性があることも頭に入れておきましょう。
企業イメージが不明瞭になりやすい
多角経営を導入することで、これまで築き上げてきた企業としてのブランドイメージが崩れてしまう可能性があります。企業イメージが不明瞭になってしまうと、消費者から「この会社は何がしたいのか」など不信感を抱かれてしまうこともあります。
企業イメージは、競合他社との差別化に大きな効果を発揮します。そこが曖昧になってしまっては重要な機会損失を被ってしまうため、注意しなければいけません。
自社の商品やサービスへのリピート率や顧客満足度を維持するためにも、これまでの顧客への配慮を忘れず、慎重に進めていくようにしてください。
多角経営を成功させるための6つのポイント
多角経営を成功させるためには6つのポイントを押さえなければいけません。
【多角経営を成功させるための6つのポイント】
|
失敗しないためにも、メリット・デメリットと併せて把握しておきましょう。
①既存事業の価値を高める
多角経営を成功させるためには、まず既存事業の価値を最大限まで高めましょう。軸としている事業の商品・サービスにおいて、今できる改善策があるか考えてください。既存事業の利益を最大化することで、多角経営を進めていくために必要な資金力の基盤が整います。
また、しっかりとした基盤ができれば多角経営の成功率は上がるため、まずは既存事業を見直して価値を高めてください。
②少額投資で始める
多角経営は必ず成功するとは限らないので、最初から巨額のコストをかけるのは危険です。まずは少額投資からスタートさせ、リスクを減らして多角化を行いましょう。
参入した事業の成長が見られ、市場の状態や自社の能力などをしっかりと見極めてから追加で投資を行うようにしてください。
最初の投資が大きすぎると、その負担が既存事業へ影響する可能性もあります。まずは様子を見ながらゆっくりと進めていき、徐々に拡大していけるように準備をしておきましょう。
③既存事業と関連性が高い分野を選ぶ
多角経営における相乗効果を効率的に獲得するためには、既存事業と関連性が高い分野を選びましょう。これまで培ってきたノウハウや経営資源を活用することで、早い段階で相乗効果を高めることができ、多角経営の成功率が上がります。
ただし、相乗効果や自社の強みの過信は危険です。保有している経営資源や強みが、競合他社よりも圧倒的に秀でている場合は別ですが、実際はわずかな差でしかないケースが多くあります。
多角経営で参入した市場においても、現状の競争関係がそのまま反映されることも少なくありません。期待するほどの相乗効果が得られない可能性もあるので、まずは顧客価値を高めていきましょう。
④企業理念から逸れない
「企業理念」は経営を進めていく上で特に重要な指針です。この指針がブレてしまっては働く社員も方向性を見失ってしまい、どのように事業を進めればいいか迷ってしまいます。そのため、多角経営は定められた企業理念から逸れないように進めていくようにしてください。
しかし、企業理念が市場環境やその時代にそぐわないケースもあります。そのような場合は、多角経営をきっかけとして企業理念を見直し、必要であれば変更するなど柔軟に対処していきましょう。
⑤M&Aによる多角化も検討する
関連事業のみでの多角経営が難しい場合や、期待するほどの相乗効果が得られないといったケースも少なくありません。
もしも自社がこのような状態に当てはまるのであれば、M&Aによる多角化も検討していきましょう。関連性が高くない事業で多角化をしても、他社が培ってきたノウハウやスキルを活用できるため、事前に得られる相乗効果についても想定できるようになります。
もちろん、M&Aを行うことで新しい負担が生じることも珍しくありません。しかし、得られる相乗効果がそのコストを上回るのであれば、M&Aによる多角化の方が自社内で行うよりも負担やリスクを減らすことに繋がります。
⑥新規事業責任者を新たに採用しない
特に中小企業の場合、新規事業の責任者として新しい人材を採用するのは避けてください。
多角経営において重要なポイントは既存事業との関連性です。既存事業との相乗効果を考えた場合、新規事業に精通している人を採用したとしても、本業に対する理解度が低ければ失敗する可能性が高くなってしまいます。
多角化の成功率を高めるためには、本業について深く理解しており、なおかつ業務において様々な権限のある経営幹部や社長が動くようにしましょう。
多角経営の進め方
多角経営には、「自社のみ」「他社との連携」「M&A」の3つの進め方があります。まずはそれぞれの特徴を見ていきましょう。
自社のみで進める |
|
他社と連携して進める |
|
M&Aで進める |
|
自社のみで進める場合、上記のようなメリットがありますが、新しく斬新な発想の商品・サービスを生み出しにくく、市場へ投入するまでに時間がかかってしまうこともあります。
それぞれのメリット・デメリットをしっかりと理解し、自社にとってどの進め方が良いか見極めてください。
まとめ
多角経営は、事業を拡大して企業として成長するために欠かせない戦略です。経営基盤を安定させてリスクを分散したり、社員のモチベーション向上が可能になったりと多くのメリットがある一方で、コストがかかる点や大きな損失を生んでしまうことなど、起こりうるデメリットもしっかりと理解しておかなければいけません。
企業として長く生き続けるためには、時代の変化や顧客ニーズの多様化など、さまざまな背景に対して柔軟に対応できるかどうかがポイントです。多角経営について理解を深め、企業として大きく躍進できるように徹底した準備を行っていきましょう。
フランチャイズ本部に完全委託で高収益の投資型フランチャイズはこちら>>
上場企業が運営支援する高収益な結婚相談所ビジネスはこちら>>
この記事を読んだ人にオススメ
新規事業選びの成功法則!押さえるべき3つの重要ポイント
この記事の信頼性
BBSインターナショナル株式会社
代表取締役
川口 毅
2002年、慶應義塾大学経済学部卒、大手広告代理店に入社。
その後メンタルコーチへのキャリアチェンジを経て、
2013年にNBCインターナショナル(株)に入社、フランチャイズの加盟店開発を専業とする。
2016年、同社取締役就任。2018年に事業部を分社化してBBSインターナショナル(株)を設立し、代表取締役就任。
フランチャイズの展開コンサルティングを主軸とし、フランチャイズ本部構築や、新規ビジネスの資金調達支援も行っている。