【コングロマリットとは?】9つのメリット・デメリットや主な手法、有名企業の例をご紹介
企業の経営スタイルの1つである「コングロマリット経営」。コングロマリット企業は日本にも多く、リスクヘッジの面から導入を考えている方も多いでしょう。
しかし、「名前は聞いたことがあるけれど、具体的な内容はよく分からない…」という方も少なくありません。
そこで本記事では、コングロマリットの基本的な情報をはじめ、その効果やメリット・デメリット、主な手法や具体的な企業の例を紹介します。
特に中小企業の場合、多角経営を成功させるためにコングロマリットを導入するケースは多いです。お伝えする内容でコングロマリットに対する理解を深め、自社の多角経営の参考にしてください。
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<目次>
コングロマリットとは
コングロマリットは、日本語訳すると「複合企業体」という意味になり、異なる業種の企業同士の買収や合併によって発達した企業を指します。
通常の買収や合併の場合、主に業務関係がある企業同士で行われることがほとんどです。コングロマリットでは、関連の低い事業を所有・運営することになります。
例えば、不動産・自動車製造・エンターテイメント・金融・食品製造などのように、関連のない事業を所有・運営しているグループ会社などがコングロマリットに分類され、具体的には「ソニー株式会社」や「楽天グループ株式会社」が挙げられます。
コングロマリットによる2つの効果
コングロマリットには主に下記の2つの効果があります。
【コングロマリットによる2つの効果】
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まずは、コングロマリットによって生まれる効果について正しく認識しましょう。
①コングロマリット・プレミアム
コングロマリット・プレミアムは、関連性のない事業を獲得することによって、自社が保有している事業とのシナジー効果が発揮され、それぞれが単体で存在している以上の高い市場価値が期待できるポジティブな効果のことです。
これまで自社になかった新しいノウハウや市場の獲得を実現することにより、売上の向上・人材活用の活発化・新しいアイデアの創出・既存顧客の囲い込みなど、多くのメリットが期待できます。
②コングロマリット・ディスカウント
コングロマリット・プレミアムとは反対に、ネガティブな効果が「コングロマリット・ディスカウント」です。想定していたよりもシナジー効果が発揮されず、企業価値を低下させる効果を指します。
コングロマリット・ディスカウントの主な要因は、新事業の独立性が高すぎることです。事業間でのシナジー効果を生み出しにくくなり、収益の取り合いといったトラブルにも発展してしまいます。
また、異業種の買収をやみくもに繰り返している状態では、コングロマリット・ディスカウントに陥ってしまうリスクが非常に高くなるため、中長期的な経営プランをしっかりと立てておきましょう。
コングロマリット経営のメリット・デメリット
紹介したように、コングロマリット経営にはプラスになる効果とマイナスになってしまう効果があります。
ここでは、コングロマリット経営の具体的なメリット・デメリットを確認していきましょう。
【コングロマリット経営のメリット・デメリット】
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コングロマリット経営の5つのメリット
コングロマリット経営では、さまざまなメリットが得られます。ここでは、その中でも特に重要となる5つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
【コングロマリット経営のメリット】
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メリットを最大限に活かすためにも、正しい知識を身につけることは大切です。具体的にどのようなメリットが得られるのか、下記でそれぞれ詳しくお伝えします。
①経営におけるリスクを分散できる
コングロマリットは異なる事業の複合体です。経済情勢や市場環境など、何らかの要因によりいずれかの事業が衰退してしまっても、他事業が好調ならカバーできるため、経営リスクの分散が可能となります。
近年では、「大量生産&大量消費」のビジネスモデルが通用しない業種も多く、消費者のニーズの変化や多様性の広がりによって、単体事業だけでは安定した経営が難しくなっている企業も少なくありません。
さまざまな背景の変化に対応し、急激な経営不振や財政悪化などを回避することができる点は、コングロマリット経営の大きなメリットといえます。
②売上を拡大できる
単体事業だけでは売り上げの拡大に限界があります。日本のマーケットを飛び出して海外へ進出する企業も多くありますが、そもそも海外進出するほどの余力や予算がない中小企業も少なくありません。
コングロマリット経営を導入すれば、複数事業の経営で売上の拡大が狙えます。また、合併・買収によりこれまでとは違ったビジネスチャンスが広がり、斬新で新しいアイデアが生み出されることもあるので、ビジネスの可能性を大きく広げることが可能です。
既存事業の売上拡大はもちろんのこと、経営の安定化・新規顧客の獲得・市場シェアの拡大など、持続的な経営をするためのプラス効果が非常に大きな戦略といえます。
③相乗効果(シナジー効果)を狙える
コングロマリットの導入により、これまで自社にはなかった新しい技術やノウハウを共有できます。さらに、これまで関連性が低いとされていた事業同士を組み合わせることで、画期的な商品や先進的なサービスを生み出すことも不可能ではありません。
また、知識・技術・人材・機械設備などの共有は経営資源の強化にも繋がり、スピード感をもって新しい市場への参入を進めることが可能です。
常に変化が起こるグローバル経済の現在において、コングロマリット経営のシナジー効果は、少ない労力・時間を有効的に活用したいと考える中小企業に最も適した戦略といえます。
④中長期の新しいビジョンを描ける
コングロマリット経営は、自社で0から全てをまかなうよりも効率的に多角化を進められますが、短期間での成果は出にくいです。その分、中長期的な新しいビジョンを描きやすく、企業全体で持続的な成長を図ることが可能となります。
綿密に中長期のプランを立て、ゆっくり時間をかけて進めていくことで、グループ企業の中枢を担う重要な事業まで発展することも珍しくありません。短期的な成果には向いていませんが、こうした中長期的ビジョンを描くことで、企業の将来を見通すことが可能となり、より経営強化を図ることができます。
⑤事業再編を行いやすい
コングロマリット経営は、基本的に異なる事業による多角化です。そのため、経営を管理する会社を設立して、企業の一員として独立するのが一般的な方法となります。
こうすることによって経営環境が変化し、事業再編やM&Aを迅速に行うことが可能です。さらに、間接部門の統合がしやすくなり、事業単体ではなく会社全体の最適化もしやすくなります。
コングロマリット経営の4つのデメリット
メリットがある一方で、コングロマリット経営によって起こりうるデメリットもあります。
【コングロマリット経営のデメリット】
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デメリットとして特に注意すべき点は上記の4つです。それぞれの具体的な内容をよく理解し、予期せぬトラブルを未然に回避できるようにしておきましょう。
①企業内でのコミュニケーションに不具合が生じやすい
経験・知識・技術など、専門的な経営資源の獲得が目的のコングロマリットは、それぞれの事業の独立性が高く、専門外の事業会社との接点がほぼないため、コミュニケーションを取れる機会が少ないです。
企業内の事業同士が連携をうまく取れない場合、必要な内部情報の共有ができず、問題が生じてしまいます。特にM&Aの直後は、双方の異なる企業風土や評価制度の統合により、不満や不安が蓄積されてしまうケースも少なくありません。
②企業統治が難しくなる
コングロマリット経営では、複数の企業が合併してグループを形成します。しかし、お互いの関連性は低いので、組織的にはグループとなっても実質的にはそれぞれが独立している状態です。そのため、全体の舵取りが難しく、企業統治が困難になってしまうケースは少なくありません。
コミュニケーション不足から運営が適切に進められなかったり、不正行為が起こってしまったりといったトラブルが生じることもあります。
③企業価値が低下する恐れがある
異なる事業を展開することにより、これまでの企業価値が低下してしまう恐れがあります。投資家は1つの事業に対して評価をしているため、多角的な展開をすることで評価されなくなってしまうのが要因です。
また、コングロマリットにおけるシナジー効果が想定したよりも低いケースも多く、その結果として企業価値が下がってしまうことに繋がります。
④短期間では成果が見込めない
コングロマリット経営では、短期間での成果を見込むことは難しく、中長期的な計画が必要です。短期成果を期待する場合は、他の戦略を検討するようにしてください。
そもそもコングロマリットは、これまでの事業や市場との関連性が低く、ノウハウや実績のない分野へのビジネス展開が主となるため、短期間で成果を出す戦略には向いていません。
「今まさに窮地に追い込まれている会社を救うためのプラン」ではないということをしっかりと頭に入れておきましょう。
コングロマリットの主な手法
コングロマリットには主に3つの手法があります。
【コングロマリットの主な手法】
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最も適した手法でコングロマリット経営を行えるよう、それぞれの違いや特徴について詳しく見ていきましょう。
吸収合併・新設合併
1つ目の方法は、複数の会社・組織を法的にまとめる手法です。1つの企業がその他の会社を取り込んで吸収することを「吸収合併」と言います。基本的には、大規模な会社が他企業を吸収するのがほとんどです。
被合併会社を消滅させて新しく会社を設立することを「新設合併」と言います。新設会社の発行する株や、合併会社の新株予約権や社績などが、会社法における新設合併の対価として規定されます。
資本提携
片方の企業、もしくは両方の企業が株式を保有し、資本関係を構築した上で業務や資金などの多方面で協力していく手法が資本提携です。
双方が保有しているノウハウを共有できる上に、与信が高まる可能性があるため、経営に課題を抱えている企業にとっては大きなメリットになります。
譲渡する株式は、発行済株式総数のおよそ1/3以下にするのが一般的です。多く持ちすぎてしまうと関係性が偏ってしまい、経営の独立性を保つことが難しくなってしまいます。
買収
買収は、企業を買い取り経営権を獲得して子会社にする手法です。発行している株式の全てを取得することも珍しくなく、「株式譲渡」「事業譲渡」などの手法も買取に含まれます。
買収は資本提携よりも資本の結びつきが強く、会社同士の結束力を高めることが可能です。
コングロマリット企業の例
コングロマリット経営を実際に導入している企業にはどのような種類があるのか、ここで代表的な5社について詳しく紹介します。
【コングロマリット企業の例】
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それぞれどのようなサービスを提供しているのか確認し、自社のコングロマリット経営の参考にしてください。
株式会社日立製作所
競合他社が困難な経営状況に陥っている中でも、コングロマリット経営によって躍進を遂げているのが株式会社日立製作所です。
海外でも知名度の高い株式会社日立製作所は、IoTプラットフォームを主体とした多角化戦略で高いシナジー効果を発揮しています。株式会社日立製作所が展開している主な事業は下記の通りです。
【株式会社日立製作所の主な事業内容】
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エネルギー事業では、2020年にスイスの大手重電企業を買収しており、さらなる躍進を遂げています。
ソニー株式会社
音楽機器の製造を軸としていたソニー株式会社は、ウォークマンの販売により大手企業の仲間入りを果たしました。リスク分散のためにコングロマリット経営を導入し、さまざまな事業に参入しています。
現在は、主力事業が音楽機器の製造・販売ではなく「ゲーム機の販売」「ネットワークサービス」です。その他の主な事業には下記のような種類があります。
【ソニー株式会社の主な事業内容】
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中でも金融事業は好調な業績となっており、主力事業に並びそうなほどの勢いがあります。
楽天グループ株式会社
ECモールを主軸としていた楽天グループ株式会社は、現在70を超える幅広いサービスを提供しており、コングロマリット経営を成功させた代表的企業といえます。
楽天グループ株式会社は2000年に上場し、その後スピード感のあるコングロマリット戦略を実施してきました。その結果、設立後およそ20年で高い知名度を誇る大企業にまで成長しています。現在主軸となっているのは主に下記の事業です。
【楽天グループ株式会社の主な事業内容】
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その中でも特に「楽天カード」の発展はすさまじく、楽天グループの大きな収入源の1つとなっています。
合同会社DMM.com
合同会社DMM.comは、コングロマリットを進めることで幅広い事業展開を実現し、近年ではスポーツ分野への進出も果たしました。
主軸となっている事業は動画配信ですが、それ以外にも下記のような多様なサービスを提供しています。
【合同会社DMM.comの主な事業内容】
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DMM FXなどはテレビCMでも宣伝されており、投資を知らない人でも「聞いたことがある」と認識できるほど有名です。
東日本旅客鉄道株式会社
日本国内における鉄道輸送事業を主軸としている東日本旅客鉄道株式会社。コングロマリットによって、下記のように幅広い事業展開を実現しています。
【東日本旅客鉄道株式会社の主な事業内容】
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特に観光・ホテル運営は業績が好調で、国内の交通機関に限らず、観光業界においても大きな影響力を持つほど成長しています。
まとめ
コングロマリットはM&Aを主とした多角化戦略です。自社にはないノウハウや技術力を獲得することで、新市場への参入がスムーズになり、幅広い分野での事業展開が実現できます。
売上の拡大や大きなシナジー効果などが期待できる一方で、企業統治が難しくなったり企業価値が低下したりするデメリットも存在するので、安易に取り組むのは危険です。
まずはコングロマリットについて正しい情報を収集し、中長期的な計画を綿密に組み立てていきましょう。
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BBSインターナショナル株式会社
代表取締役
川口 毅
2002年、慶應義塾大学経済学部卒、大手広告代理店に入社。
その後メンタルコーチへのキャリアチェンジを経て、
2013年にNBCインターナショナル(株)に入社、フランチャイズの加盟店開発を専業とする。
2016年、同社取締役就任。2018年に事業部を分社化してBBSインターナショナル(株)を設立し、代表取締役就任。
フランチャイズの展開コンサルティングを主軸とし、フランチャイズ本部構築や、新規ビジネスの資金調達支援も行っている。