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【新規事業にかかる費用の種類】イニシャルコスト・ランニングコストの内訳や資金の調達方法、予算計画の立て方も徹底解説
新規事業をスタートさせるためには必ずコストがかかります。しかし、具体的な値段や費用の内訳について把握していない方も多いでしょう。
そこで本記事では、新規事業にかかる費用の内訳や調達方法、予算計画の際に役立つポイントについて詳しく紹介します。必要な費用を把握していないと、スムーズに新規事業を立ち上げられません。正確に事業計画を立てるためにも新規事業にかかる費用を確認していきましょう。
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<目次>
新規事業にかかる費用は2種類
新規事業にかかる費用は大きく分けて2種類あります。事業の内容や規模によりかかる費用は大きく異なりますが、どんな業種であってもここでお伝えする2種類は必須です。
まずは新規事業にかかる2種類の費用について詳しく見ていきましょう。
【新規事業にかかる費用2種類】
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初期費用(イニシャルコスト)
初期費用は、事業をスタートさせるために最初にかかる費用や経費を指します。店舗が必要な場合は物件取得費や内装工事費、飲食店であれば厨房器具や食器類にかかる費用も必要です。また、スタッフの採用費用・広告宣伝費用などもあります。
規模が小さい場合は数十万円程度で収まることもありますが、店舗の大きさや立地によっては1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
必要以上に初期費用をかけすぎてしまうと、後々の回収が非常に厳しくなってしまうため、金額が適切か必ず検証してください。
維持費用(ランニングコスト)
スタートした新規事業を継続させていくために必要となるのが「維持費用(ランニングコスト)」です。商品や材料の仕入れ代・物件の家賃・光熱費・人件費などがあります。
当然ですが、維持費用よりも売り上げが低ければ赤字となり、最初にかかった初期費用の回収もできません。長く事業を続けていくためにも、ランニングコストの管理は非常に重要です。初期費用と同様に必ずしっかりと検証を行い、最初のうちは無駄な出費を抑えるよう注意してください。
新規事業にかかる費用の内訳
先ほどお伝えしたように、新規事業にかかる費用には「初期費用」と「維持費用」の2種類があります。ここでは、それぞれの内訳を確認していきましょう。
【新規事業にかかる費用の内訳】
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お伝えするのは、初期費用・維持費用において一般的に必要とされる費用項目です。
新規事業の初期費用(イニシャルコスト)の主な内訳
まずは、新規事業の初期費用について見ていきましょう。具体的には以下の費用が必要になります。
【新規事業の初期費用(イニシャルコスト)の主な内訳】
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それぞれの具体的な金額について下記でチェックしていきましょう。
法人の設立費用
新規事業の立ち上げでは法人の設立はマストではありません。しかし、事業をスタートさせるために法人を設立する場合、そこに費用がかかります。法人の種類によって費用が異なるので下記の表で確認してください。
法人種類 | 費用 |
株式会社 | 約25万円 ※別途資本金が必要 |
合同会社 | 約10万円 ※別途資本金が必要 |
一般社団法人 | 約11万円 |
一般財団法人 | 最低311万円 |
NPO法人 | 印鑑作成費・証明書取得費などの実費のみで設立可能 |
株式会社や合同会社の場合、設立費用とは別に資本金が必要です。この2種類を比較すると、合同会社の方が登録免許税が安く手続きも簡単になるため、法人設立の際に選ばれることが多くあります。しかし、株式会社の方が社会的信用度が高く、融資などの際に有利になることも少なくありません。
このように法人の種類によってメリット・デメリットがあるので、それらを比較検討して慎重に選択してください。
人材の採用費用
人材を募集する際にも費用がかかります。自社のSNSや張り紙などで募集するのであれば0円ですが、簡単には集めることができません。そのため、多くの場合で求人広告へ掲載をします。
求人広告へ掲載を行う場合、媒体により費用が異なるので注意しておきましょう。また、同じ媒体でも費用には大きな差が生じるため、必ず事前に確認するようにしてください。
主な求人媒体の平均費用は下記の通りです。
求人媒体 | 平均費用 |
求人サイト | 約2万円~300万円 |
自社の採用ホームページ | 約50万円~320万円 |
SNS | 0円 |
フリーペーパー | 約1万円~60万円/1枠 |
ハローワーク | 0円 |
SNSやハローワークでは無料で求人募集が可能です。しかし、求人サイトやフリーペーパーなどに比べると効果が出にくいケースもあるため、状況に合わせて媒体を選択しましょう。
広告宣伝費用
事業をスムーズに進めていくためには宣伝が欠かせません。特に近年は「ネット社会」と呼ばれるほどインターネットが普及しており、知りたい情報や調べたいことはスマホやパソコンを使用して検索することがほとんどで、Web集客が主流になりつつあります。
広告宣伝としては、チラシなどよりも自社ホームページが非常に有効となるため、新規事業に合わせて新しいホームページの開設を行いましょう。制作を請け負ってくれるプロに依頼するのも1つの方法です。
自社ホームページ制作は、サイトや依頼会社の規模により異なりますが、約100万円〜500万円ほどになります。既存のホームページがある場合は、必要な施策のみ依頼するなど状況に応じた対策を施しましょう。
テナントの費用
事務所や店舗が必要な事業の場合、テナントを借りるための費用がかかります。テナントの費用は物件の家賃や立地により異なるため、事前にいくつかの物件を比較して相場をチェックしておきましょう。
テナント費用として必要な項目は下記の通りです。
テナント費用の内訳 | 相場 |
敷金(保証金) | 賃料の3ヶ月~10ヶ月程度 |
礼金 | 賃料の0ヶ月~3ヶ月程度 |
仲介手数料 | 賃料の1ヶ月分が上限 |
造作譲渡料 | 無償~数百万円程度 |
前家賃 | 契約日から翌月分までの日割り |
その他にリフォームが必要な場合は工事費がかかります。敷金・礼金は物件により異なり、礼金は不要なケースも少なくありません。仲介手数料は賃料1ヶ月分が上限となります。
造作譲渡料は、借主と前オーナーとの間で店舗資産譲渡契約を行う場合、双方が了承した範囲の造作物に対して前オーナーへ支払う費用です。これは無償の場合もありますが、数百万円必要となることもあるため、必ず確認するようにしましょう。
事業に必要な設備の費用
テナントを取得したら、事業に必要となる設備を導入します。机や椅子など運営するために必要となるものは、あらかじめリストアップしておきましょう。
飲食店や小売店を行う場合に必須となるレジは、1台約10万円~20万円前後です。その他にも事業用の事務用品や什器などがありますが、購入ではなくリースという方法もあります。電話・インターネット回線・Wi-Fiなどが必要な場合は、それらの費用も組み込んでおきましょう。
システムの開発費用
システム開発は、新規事業の心臓部ともいうべき重要なポイントです。業務をシステム化することで作業効率をアップさせることができ、スムーズな運営が可能となります。
システム開発費は非常に幅が広く、小規模であればおよそ20万円からとなり、中規模の開発は130万円からが目安です。大規模なシステム開発となると400万円が最低ラインとなり、内容によっては1,000万円を超えるケースも少なくありません。
新規事業の維持費用(ランニングコスト)の主な内訳
維持費用は、事業を継続させていくために必要なコストです。抑えられる部分は節約する必要がありますが、無理に安くしようとすると事業そのものに影響が出てしまうため注意してください。
【新規事業の維持費用(ランニングコスト)の主な内訳】
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それぞれの費用について詳しく見ていきましょう。
テナントの賃料
事務所や店舗として借りるテナントには家賃がかかります。店舗経営の場合、目安となるテナント賃料は売上目標の7%〜10%以内に抑えるようにしましょう。例えば、売上目標を300万円にしている場合、適切な家賃は30万円以下となります。
新規事業としてスタートさせる業種や目標とする経営比率により異なりますが、可能な限り7%〜10%以内に収めることで、賃料が経営を圧迫しすぎることはありません。
各種保険料を含めた人件費
事業を運営する上で欠かせないのが人件費です。人件費には、労災や雇用保険などの社会保険料や福利厚生費・退職金などが含まれています。業種・事業内容・雇用形態・個々のスキルにより異なるため、同業種の平均的な給与やボーナス金額などについて調べておきましょう。
人件費では「人件費率(%)=人件費÷売上×100」を計算し、売上に対しての人件費の割合を算出することが大切です。数値が高いほど人件費の割合が大きくなるため、下記の業種別平均人件費率と比較してみましょう。
業種 | 人件費割合の目安 |
飲食業 | 約30% |
小売業 | 約10~30% |
サービス業 | 約40~60% |
ホテル業 | 約30% |
会社の負担となってしまうほどの割合となっている場合は、人件費を見直すようにしてください。
光熱費
水道光熱費も毎月必要なコストです。事務所やオフィスなどの光熱費はフロア面積に比例し、10坪程度の場合は約2万円から、30坪程度の広さの場合は約4万円から、80坪程度であれば約8万円からが1つの目安になります。
照明の間引き・空調設備のこまめなメンテナンスなど、小さな部分で光熱費の削減が可能となるため、事業スタート時点ではなるべく光熱費は抑えるようにしましょう。
通信費
通信費は、電話やインターネットだけでなく郵便代・書留代・切手代なども含みます。通信費は非常に差が大きくなるため、平均や目安などはほぼありません。そのため、どの通信が一番よく使用するのか考え、抑えるべき部分とそうでない部分をはっきりとさせておきましょう。
電話の使用が多い・郵送が主となるなど、通信費の内訳を可視化することでより詳細な費用目安を出すことができます。
マーケティング費用
「マーケティング」という言葉が指しているものは、企業により異なるため一概には言えませんが、基本的には下記のような項目が該当します。
【マーケティング費用に含まれる項目】
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近年では、Web上でのブランディング・集客活動・販促活動を行う「Webマーケティング」が主流となっています。Webマーケティングの費用相場は下記の通りです。
Webマーケティングの種類 | 費用相場 |
Web広告 | 広告運用費+マージン ※マージン相場は約20% |
SEO対策 | 1万円~100万円以上 ※施策内容により大幅に変動する |
Webコンサルティング | 10万円~50万円/月 |
仕入れ費用
飲食店や小売店の場合、運営していくためには仕入れが必要となります。これらも事業内容や契約する仕入れ先によって費用は大きく異なるので、事前に確認しておきましょう。
ここで注意すべきは、仕入れ費用が大きくなりすぎないようにすることです。こだわりにより特定の仕入れ先のみと契約するケースも多くありますが、仕入れ量などに十分気を付けましょう。
余裕を持った仕入れは、ある程度営業を続けて売上の平均値などが出始めてから行うようにしてください。
その他の経費
事業を運営していくにあたって消耗品の交換は必ず起こります。事業内容によって異なりますが、主となる種類は下記の通りです。
【消耗品の種類】
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数万円程度で済む場合もあれば数十万円以上かかることもあり、準備すべきものや数などにより変動します。
新規事業にかかる費用の調達方法4選
新規事業を始めるためには、非常に大きな費用が必要です。こうした費用を調達する方法は大きく分けて4種類あります。
【新規事業にかかる費用の調達方法4選】
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それぞれの特徴を理解し、最も適した方法を選びましょう。
①自己資金
負債を抱えずにスタートできるのが「自己資金」です。全ての費用を自己資金でまかなえるのであれば何の問題もありませんが、事業を軌道に乗せるまで時間がかかることもあるので注意が必要です。
最低でも初期費用とは別に運用コストとして3ヶ月〜5ヶ月分くらいの余裕がなければ、途中で資金繰りに悩んでしまいます。無理せず自己資金を貯めていき、金融機関からの融資や助成金なども検討してみてください。
②金融機関からの融資
資金の調達方法として最もポピュラーな方法が「金融機関からの融資」です。金融機関からの融資には返済義務が生じ、借りられる金額にも上限があります。
また、自己資金が0円の場合は審査に通るのが難しいことがほとんどなので、金融機関から借りることを前提としている場合も、ある程度の自己資金は準備するようにしてください。
金融機関の審査では、事業計画の再現性や業績などがチェックされます。事業内容をしっかりと考え、再現性の高い計画を立てて資料を作成するようにしましょう。
③助成金・補助金を活用する
新規事業の推進を後押しするための「助成金・補助金」があります。国や自治体が実施している制度で、受け取った費用の返済は不要です。
しかし、助成金・補助金は申請後すぐに受け取れるものではありません。早くて1ヶ月、遅ければ1年ほどの期間が空くケースもあるため、なるべく早く申請を出すようにしてください。
④投資家やベンチャーキャピタルから出資してもらう
新規事業の将来性が認められれば、投資家やベンチャーキャピタルからの出資が期待できます。基本的に出資金の返済は不要ですが、通常何かしらのリターンが求められます。リターンとしては、新規事業に関する権利・権限や事業が成功した際の利益分配などが一般的です。
投資家やベンチャーキャピタルからの出資は、事業内容に魅力がなければ期待できません。事業計画書をしっかりと作り込み、魅力を十分にアピールできるよう準備しておきましょう。
新規事業の立ち上げにおける予算計画の立て方のポイント
新規事業の立ち上げにおいて予算計画は非常に重要です。既存事業がある場合、新規事業の予算計画を同じように考えてしまいがちですが、まずは小さな目標設定からスタートさせていきましょう。事業が軌道に乗るまでは数年かかるため、最初から既存事業と同じような予算計画では無理があります。
また、予算設定のタイミングも大切です。初めから予算や目標を定めるのではなく、事業開発プロセス後に設定すれば現実的な計画が立てられ、実績との差が大きく広がることはありません。
さらに、費用の見落としを減らすために経験者の知見も参考にしましょう。起業・事業開発の経験者からリアルな声を聞くことにより、イレギュラーとなる費用や予算が増えることを想定した、余裕のある予算計画の作成が可能です。
まとめ
新規事業をスタートさせるためには、「初期費用(イニシャルコスト)」と「運用費用(ランニングコスト)」の2つが必要です。
初期費用には、法人の設立費用・広告費用・システム開発費用などがあり、事前に準備をしなければいけません。運用費用は光熱費・通信費・仕入れ費用など、事業を継続するために必要な費用です。
新規事業を立ち上げる時には、初期費用と併せて3ヶ月〜5ヶ月分の運転資金を準備しましょう。売上がある程度安定するまでの運転資金がなければ、途中で資金繰りに悩んでしまいます。
自己資金のみでは限界がある場合は、金融機関からの融資・助成金や補助金の活用・投資家やベンチャーキャピタルからの出資も検討しましょう。事業の規模やリスクを考えて選択してください。
本記事を参考に、新規事業にかかる費用を具体化させていきましょう。
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この記事の信頼性
BBSインターナショナル株式会社
代表取締役
川口 毅
2002年、慶應義塾大学経済学部卒、大手広告代理店に入社。
その後メンタルコーチへのキャリアチェンジを経て、
2013年にNBCインターナショナル(株)に入社、フランチャイズの加盟店開発を専業とする。
2016年、同社取締役就任。2018年に事業部を分社化してBBSインターナショナル(株)を設立し、代表取締役就任。
フランチャイズの展開コンサルティングを主軸とし、フランチャイズ本部構築や、新規ビジネスの資金調達支援も行っている。